Feminite du bois / フェミニテデュボワ (1992)【香水レビュー】

1992年、資生堂から発売された名香「フェミニテデュボワ」の香りを紹介します。現在資生堂版は廃盤となり、復刻版がセルジュルタンスから発売されています。長らくルタンス版を何本もリピートしながら愛用してきましたが、暗紅色の優しい曲線を描く美しいボトルにずっと憧れており、つい最近オリジナルのパルファンを入手しました。

https://twitter.com/mone_perfume_/status/1186871797511118848
私的偏愛度:☆☆☆☆☆
私的オススメ度:☆☆☆★★


まず第一に、ルタンス版の再現度の高さに驚き、嬉しくなりました。昨今は同じ商品名を冠した「復刻品」がオリジナルとまったく異なる香りで売られることも少なくないので、多少香りの質が異なる可能性を念頭に入れていました。
実際資生堂版とルタンス版には明らかに認められる違いがありました。処方が変わったことはルカ・トゥリンに確認せずとも明確です。そして、資生堂版は期待を裏切らない本当に素敵な香りでした。
けれど、ルタンス版もこれまでと同様大好きな香りのままです。それがとても嬉しかった。資生堂版は簡単にリピートできるものではありませんから、わたしはこれからもルタンス版を愛用し続けます。

上記を前提とした上で、資生堂版に対しては素晴らしいのひとこと。
香水を愛し、その歴史に敬意を払ういちファンとして、また、ありとあらゆる上質な香りをインプットしていいものをいいと言える感性を養いたい調香師を志す学生として、この香りを知ることができたのは本当に幸運でした。
パルファンを試したというのもありますが (ルタンス版はオードパルファンのみの発売) 、香りが重層的で厚みがあり、一層まろやか。
古い香水なのもあり香り持ちはわずかに衰えていましたが、それを差し引いても感動を損なうほどではありません。
豊潤でまろやかな甘さの中にもシダーウッドの涼やかで直線的な香りが芯を保ち、女性らしい柔らかい官能性がありながら決して媚びへつらうことはない、円熟した静かな香り

Feminite du bois / フェミニテデュボワ (木のフェミニティ)【香水レビュー】

2019-08-08

わたしの人生に影響を与えた特別な5本の香水たち【香水】

2019-10-14


当時、今よりも「女性向け香水」と「男性向け香水」の線引きが明確だった頃、ウッディ調の香水は男性のためだけのものだったそうです。
「フェミニテデュボワ」、邦名「木のフェミニティ」は、ウッディノートを主格にフルーティーなプラムや繊細なフローラルをあしらい、初めて女性向けのウッディフレグランスとして発売されて話題となりました。
セルジュ・ルタンスがプロデュースを手掛けた資生堂フレグランス、傑作揃いです。

フェミニテデュボワの香りの構成と特徴


青葉の茂る鮮やかなシダーウッドの直線的で凛とした香りを和らげるように、熟したプラムやしっとりしたピーチ、そして甘いシナモンやバニラが華を添えます。

香りの構成は以下の通り (Fregrantica の情報を参考にさせていただいています)。

 トップ: ハチミツ、カーネーション、
ジンジャー、シナモン、
シダー、ローズ
ミドル:プラム、ピーチ、
ビーワックス、オレンジブロッサム、
スミレ、カルダモン、クローブ
ベース:バニラ、サンダルウッド、
シダー、ムスク、ベンゾイン、シナモン


肌に載せた瞬間、森林の奥で深呼吸しているかのような涼しささえあるシダーウッドがするりと鼻腔を通り抜けていきます。冷たい風をも感じさせる涼やかな香りにも関わらず尖ったところは一切なく、どこまでも繊細。
ルタンス版では味わったことのない香りで、この出だしから心打たれました。
優しい緑色の風を彩るように、桃色のローズの花弁がふわりと重なります。奥で控えめに香る彩度の低いジンジャーとシナモンの甘辛さが絶妙な深みを添えていて、トップノートにも関わらず奥ゆきのある立体的な香り立ちです。

ミドルノートで主役を張るのは熟れたプラム。プラムに特徴的な香気成分であるプリュノールがふんだんに用いられ、円熟した豊かな香りを生み出しています。
シダーの凛とした芯はそのままに、豊潤なフルーティー香が濃密な甘さを絡めるあたたかい香り。ねっとりと重たくなりすぎずふんわりと優しい質感を保っているのは、ほんのりと乳臭いアルデハイドC-14の働きでしょう。しっとりしたピーチ様のコクを添えています。
そこへクローブの深く静かなスパイス香がほの暗い奥行きを与え、その上で軽やかでみずみずしいスミレが愛らしく舞っています。シダーを核にしてすべての香料が円を描くように調和し、静謐で豊かなハーモニーを奏でる美しい香り。ロシャスの「ファム」に通ずるものがあります。

やがてシダー・プラム・シナモンの香りの主格の余韻を残したまま、バニラがあたたかい甘みを加えます。ほんのり焼け焦げたような香ばしい香りを持つイソEスーパーが、あたたかみを添えつつ肌馴染みをよくしています。
はじめから終わりまで凛とした表情を崩さぬまま、それでいて女性らしい調和のとれたふくよかな甘さが端麗。女性らしく在ることの美しさを、存分に教えてくれる香りです。

細かな検証をしたわけではありませんが、ルタンス版で使われているシダーは資生堂版のそれよりドライで力強い、どっしりとした骨格を持っています。その力強さを和らげ深みを加えるために、資生堂版よりプリュノールとオイゲノール (クローブに特徴的な香気成分) が多めに用いられているように思います。
フローラルは控えめで、シダー×シナモン×プラムを主骨格に、クローブを加えた香りが主役として長続きしますね。資生堂版がパルファンなのもあり、両腕にそれぞれのせてじっくり嗅ぎ比べるとルタンス版はやや平面的でエッジの効いた香りに感じます。それでもオリジナルの表情をしっかりと保った素晴らしいリメイクであることに変わりはありません。

フェミニテデュボワの調香師はクリストファー・シェルドレイク氏とピエール・ブルドン氏。両者ともに世界的に高名な素晴らしい調香師です。前者はセルジュ・ルタンスの他、シャネルでの調香も有名です。

フェミニテデュボワが似合う季節と場所


豊潤な甘さが特徴的で、秋冬の出番が多めです。うまく纏えばもちろん春夏にも使えないことはないですが、重く感じる方が多いのではないでしょうか。

セルジュ・ルタンスの香りにはそういったものが多いですが、シーンを限定しづらい香水ですね。抽象的で、つける人の内面を反映する香りだからだと思います。わたしにとっては自分らしく在りたいときに手が伸びる1本。寝香水としても活躍してくれています。
なお、「フェミニティ」とありますが男性が纏ってももちろん素敵です。

フェミニテデュボワの香りの持続時間


発売以降30年近く経過している香水ですから、香り持ちはやや衰えているようです。肌にのせてから1時間半足らずでラストノートに到達します。パルファンにしてはかなり早いですね。ただその後、ラストノートは息長く優しく、肌の上で香っていました。持ちは4時間程度でしょうか。ムエット上では5~6時間経過した今も優しく香りを放ち続けています。

香り持ちの点に関してはルタンス版に軍配が上がりますね。

こんな人にオススメ

 

・静かで円熟した、まろやかなウッディフレグランスを探している方
・心の均衡を保つのを助けてくれる、調和のとれた優しい香りを欲している方

オリジナル版のジュースはほんのり黄色の無着色の液体でした。ボトルが象徴する深い赤みを帯びた紫色の魂を、ルタンスはジュースの色で受け継いだのだなぁと感慨深く感じます。
オリジナルの堂々たる名香ぶりに感じ入りつつ、ルタンス版の良さも再確認することができ、わたしにとって意味深い邂逅となりました。これからも大切にし続けたい、素晴らしい香りです。