Eau Parfumee au the noir / オパフメ オーテノワール

1992年から始まったブルガリ「オ・パフメ」シリーズ。世界中のお茶の香りに着眼を置き、「オーテヴェール」や「オーテブラン」など数ある人気作を輩出しています。今回紹介する「オーテノワール」は2015年に発売されたシリーズ最新作。
「世界香水ガイドⅢ」でも下記のコメントと共に星5評価を獲得していました。わたしがもっとも敬愛してやまない世界三大調香師のひとり、ジャック・キャヴァリエ氏の作品です。

created by Rinker
原書房
¥2,980 (2020/05/25 12:46:06時点 Amazon調べ-詳細)

☆☆☆☆☆ 天国のようなスモーク
まずまずの作品が続くブルガリにおいて、数珠の一品。調香したのは忘れがたき「ルフードイッセイ」(1998) を手がけ、ウードを初めて大々的に採用した (「M7」2002) ジャック・キャヴァリエだ。トップノートはマスクミラノの「ロシアンティー」に似ているが、やや物静かで、内なる声がひとつ、ふたつ加えられている。すべてのパーツがぴたりと噛み合う、まさに指物職人の技を想起させる香水だ。ウードの湿っぽさは、薬っぽいスモーキーノートで中和され、そのドライな質感はレモンがかったローズのアコードでなめらかに潤う。紙につけると本当にいい香りで、それがずっと長持ちする。肌の上では、時とともに香りがやわらぎ、食べてもいいくらいの匂いに変わる。小さな菱形の薬用ドロップを思い出す。
私的偏愛度:☆☆☆☆☆
私的オススメ度:☆☆☆☆☆
 
自分の愛するものは自力で努力して手に入れた方が喜びが大きいと考えていますので、例え親しい間柄であっても人に香水や本を強請ったことはありません。
特に香水は高価ですから、あまり好きだ好きだと主張するとプレゼントのシーズン等に周囲に気を遣わせてしまうと思い、一部のごく限られた親しい友人にしかその愛と情熱を明かしていません。したがって自宅にならぶコレクションの99.9%は自力でコツコツと集めてきたものですが、こちらの「オーテノワール」については、ジャック・キャヴァリエ氏の作品を敬愛していることをよく知る母が、昨年の誕生日にこっそりと用意してくれていたプレゼントでした。20代半ばを過ぎて親にプレゼントをもらうなんて情けない気もしますが、ありがたくいただきました。毎年の誕生日や母の日に100倍返しで親孝行を重ねたいものです。そんな経緯もあって、特に大切にしている香水のひとつです。
香りはいわずもがなとびきり美しく、ひとくちには語り尽くせない魅力に満ちていますので、それは事項にてじっくりと紐解いて参りましょう。
ひとつ言えるのは、いかにも人を選ぶ香りの筆頭格であろう「レザー」や「タバコ」、そして「ウード」といった香料たちが、誰にとっても好ましく、そして嫌味のないハーモニーを奏でているということ。上記の香料を主役に据えた香水はいくつも思いつけど、ここまで癖がなく、それでいて単調でもない絶妙な均衡を保つ香りは他に思い浮かびません。
 
オーテノワールの香りの構成と特徴


お砂糖をたっぷり加えた澄んだレモンティーを思わせる香りが、長く続きます。

香りの構成は以下の通り (Fregranticaの記載を参照しています)。

 ブラックティー、タバコ、レザー、
ダマスクローズ、ウード、
ウッディノート、パチョリ
 

「オーテノワール」の香り方はとても不思議です。ルームスプレーとしても十二分に通用しそうな非常に細かい霧状で噴射された香りは、その粒ひとつひとつに水の衣をまとっているかのように軽やかで、そして澄んでいます。穏やかに鼻腔へと立ち上ってくるそれは、まるでお砂糖と氷を浮かべたレモンティーを思わせるよう。上の香調から予想する香りとの大きな差に驚きます。
直後、スモーキーなタバコとレザーが深いモスグリーン色のパチョリとみずみずしい茶葉の香りを従えて鼻を掠めていきます。その香りは水彩画のように淡く透き通っていて、かつあとを追うように香る水気を帯びたレモンティーの風味をもつ優しいローズとウードのアコードに溶け込むように馴染み、一瞬のうちに香り全体を後方から支える土台と化してしまうよう。各ひとつひとつの香料のゆくえを追うことができるのはスプレーしてから20秒程度の間だけ。各香りが馴染み、手を繋いでしまうとその構成要素を紐解くのは容易ではありません。その様を、ルカ・トゥリンは「すべてのパーツがぴたりと噛み合う」と表現したのではないかと感じています。
エトロの「イオマイセルフ」を筆頭に、よく用いられるローズ×ウードのアコードにはレモンティー、それもリプトンや午後の紅茶から発売されている、ペットボトルに入ったあの甘いレモンティーを想起させる香りが含まれていると常々感じていましたが、この香水ではまさにその香りを主役に取り上げ、「紅茶」の香りの表現に最大限生かしているという印象です。寒い季節であれば序盤のレザーや茶葉の渋みがより一層主張を強め、陰影のコントラストが効いた香り立ちになりますが、この時期にはひたすらホッと心安らぐみずみずしく煌めくような甘い香りが続きます。
「ブルガリオパフメオーテノワール」の調香師は、上でも述べた通りジャック・キャヴァリエ氏。不動のキャリアを築く世界三大調香師のひとりであり、現在はルイ・ヴィトンにて専属パフューマーを勤めています。氏の作品が好きなので、本ブログでも頻繁に取り上げ香りを紹介しています。

vocalise / ヴォカリーズ【香水レビュー】

2019-08-05

CINEMA / シネマ【香水レビュー】

2019-09-28

CONTRE-MOI / コントロモワ【香水レビュー】

2020-02-29

Io myself / イオマイセルフ【香水レビュー】

2019-09-22

オーテノワールがにあう季節と場所


飲み慣れたお茶がもたらしてくれるくつろぎのひとときは時と場所を選ばず日々を豊かにしてくれます。
この香りもそれと同様で季節や場所を問わずにいつでも美しく、そして気軽に日常使いできる香りであることが素晴らしいと感じます。上であげた香調からは想像もつかない程いい意味でとても「オーソドックス」な香りで、誰にでも勧めやすい香水の筆頭であると思っています。
わたし個人は暖かい季節における香り立ちの方がより好きなので、これからの時期欠かせない1本になりそうです。
特に今の時期は外出もままならず、なにかと不安の募る日々ですから、こんな風に心をほっと優しく解いてくれる香りが側にいてくれるだけでとてつもなく心強く、そしてありがたく感じるのです。

オーテノワールの香りの持続時間


商品としては「オーデコロン」との記載ですが、実際には一般的なオードパルファン並みの賦香率であると思ってよさそうです。
香り持ちも申し分なし。ただし、上で述べたように「みずみずしくフレッシュな香り立ち」であることから、あえて「コロン」と名付けているのかもしれません。スプレー部分の質もよく、細かい霧でふんわりと香りがのることもこのエアリーな香り立ちの一助となっているようです。

こんな人にオススメ
 
・砂糖を溶かしたレモンティーを思わせる、心地の良い香りをお探しの方
・癖のない、すずやかなウードの香りをお探しの方

レビューを書く際には、最低限3-4か月、可能であれば半年以上かけてじっくりその香りと向き合うことを大切にしています。そんなわけで、この香りも手に入れてから半年以上、はやく感想を述べたい!とはやる気持ちを抑えて幾日を共にした上で今回の執筆に至りました (実際時間の経過と共にその香り新たな面が次々に明らかになり、印象が大きく変わってくることはよくあります) 。
時も場所も人種も性別も、そして年齢も選ばない普遍的な美というものがあるとするならば、まさしくこの香水はそれを体現したものであると思います。万人におすすめできる、素晴らしいフレグランスです。

created by Rinker
ブルガリ
¥5,735 (2020/05/25 23:02:07時点 Amazon調べ-詳細)