香りの分類とカテゴリー別オススメ香水【役立つ香水の基礎知識】

こんにちは。いつもご覧頂きありがとうございます。
前回の記事に引き続き、香水の基礎知識を取り上げます。
今回紹介させて頂きたいのは、香水の分類と香りの種類
シプレフゼアなどと言われても香りが想像できない。どんな香りでしょうか?」といったご質問を頂くことが増えてきましたので (わたしなぞに聞いて下さってありがとうございます…!) こちらの記事で簡単に解説してみたいと思います。

香水の種類と正しいつけ方を解説【役立つ香水の基礎知識】

2019-10-15

【前提】
わたしは香水の「販売員」ではありません。現在調香と同時に「フレグランスセールス」や「コンサルテーション」に必要な知識も学んではいるものの、まだ学習の途中です。
もしも初学者ゆえの間違いがあった場合は、申し訳ありません。何かお気づきの点があれば、
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フレグランスの揮発速度


香りのファミリーについて説明する前に、簡単に香りの揮発速度について紹介します。香水はひとつの成分から成っているのではなく、複数の芳香物質を組み合わせることで創られます。
物質にはそれぞれ固有の沸点 (液体から気体に変わるときの温度) があり、沸点の低いものから揮発して、その香りが鼻へと届きます。
基本的に、分子量 (分子の重さ) が小さい物質ほどすぐに揮発します (例外もあります。例えば水は、分子量は18しかない小さな分子ですが沸点は100℃と非常に高温) 。揮発した匂い分子は鼻の嗅上皮にある「嗅覚受容体」と結合し、その刺激が脳に伝わることでわたしたちは匂いを感じ取ることができます。

分子量の小さい物質ほど、嗅覚受容体と結合できる面積が少なく結合がすぐにほどけてしまうため、香りを感じる時間も短くなります。これが、トップノートです。「トップ」「ヘッド」と細かく分類されている方もいらっしゃいますが、基本的に「トップノート」で通ります。柑橘系の香りやアロマティックなグリーン・ハーブ系の香りで構成されることが多いです。

反対に、分子量が大きくなればなるほど揮発速度がゆっくりになり、一度揮発した物質は長く受容体に結合するため香りが長くとどまります。これがベースノートですね。コケ (モス) やウッディ調の香り、バニラやアンバー、ムスクで構成されることが多いです。

トップとベースをつなぐ半ばで香るのが「ミドルノート」で、大半はフローラル系の香りが占めています。

フレグランスの揮発速度


香水を選ぶとき、第一印象で購入を即決しない方がいいと言われるのはこのためです。できれば半日以上肌にのせて香りの変化を確認した方が、失敗は格段に減ります。

さて、このトップからベースにかけての香りの変化はすべての香水に共通するものですが、商品によって香りは本当にさまざまです。
事項では、香水の香りの系統による分類を簡単に紹介してみようと思います。

香りの分類
1. フローラル調


名前の通り、花々の香りが主役に据えられたグループ。
このファミリーに属する香水がもっとも豊富です。確かに、香水にお花の香りは欠かせませんよね。
甘く優しく、柔らかい印象を感じさせてくれる香りが特徴です。

三大フローラルノート」と呼ばれるバラ・ジャスミン・ミュゲ (リリーオブザバレー=スズラン) の他、ガーデニアやチュベローズ、オレンジブロッサム等のホワイトフローラル、イランイランやネロリ、スミレなどは非常によく見かけます。

フローラル香水の元祖は、コティ社から発売された「ロリガン」(1905年) といわれています。残念ながらわたしは嗅いだことがありませんが、カーネーションやジャスミン、ローズにスミレなどの豊潤なフローラルのハーモニーがほんのりパウダリックなバニラとトンカビーンに溶けてゆく、当時としては画期的な香調だったそうです。
ジャック・ゲランはおおいに影響を受け、「アプレロンデ」(1906年) や「ルール・ブルー」(1912年) の作出に生かしたと言われています。

フローラル調といっても香りはさまざまで、下に挙げたようにいろいろな分類があります。分け方は研究者や科学者によって異なりますので、あくまでも一例と思ってください。
特に最近は枠組みにとらわれない斬新な香りが増えており、綺麗にグループ分けをするのは難しいですし無粋でしょう。これらのグルーピングはあくまでもおおまかに自分の好みを探る際、参考程度に流し見するのがよいと思います。

フローラル調
【特徴】
甘く繊細で柔らかい花々の香り
【分類】
シングルフローラル:単一花香。ひとつのお花の香り
例) 「ディオリッシモ」(クリスチャン・ディオール) / 「オスマンチュス」(ザ・ディファレントカンパニー) / 「ミュゲ」(ゲラン) / 「ジャスミンジャスミン」(アールフレグランス) 
フローラルブーケ:多数の花が入り混じる花束を連想させる香り
例) 「ジョイ」(ジャン・パトゥ) / 「ミス・ディオール・ブルーミングブーケ」(ディオール) / 「シャッセオパピオン」(ラルチザンパフューム) 
アルデハイドフローラル:合成香料アルデハイドとの組み合わせが印象的な生き生きと輝く花々の香り
例) 「No.5」(シャネル) / 「アルページュ」(ランバン)
グリーンフローラル:枝葉の青さを含む生命力に富んだ花々の香り
例) 「No.19」(シャネル) / 「クリスタル」(シャネル) / 「織部」(パルファンサトリ) 
ソフトフローラル:ムスクやトンカのパウダリックな質感を含む、しっとりとした肌理細やかな花々の香り
例) 「ノクチューン」(キャロン) / 「フォーハー」(ナルシソロドリゲス) 
フルーティーフローラル:果実の香りと調和する甘酸っぱい香り。ハツラツとした印象
例) 「イングリッシュペアー&フリージア」(ジョーマローン)  / 「ジャドール」(ディオール)

スズランの香りを再現した名香、
ディオリッシモ
2. シプレ調


「シプレ」とはもともと、フランス語の「キプロス島」に由来する言葉です。
愛と美の女神アフロディーテが誕生した伝説の地ですね。
シプレフレグランスの元祖はコティの「ル・シープル」(1917年) 。この香りの流れを汲むものを「シプレ調」と呼びます。
例えば「ミツコ」(1919年) 。ジャック・ゲランは「ル・シープル」に非常に感銘を受け、ミツコの創作に生かしたそうです。
当時のコティ社は「ゲラン」や「キャロン」に並ぶ、香りの時代を切り拓く先進的で洗練されたメゾンだったのだなぁと、香水業界の歴史を学ぶ度に思います。今では見る影もないのが残念です… (今のコティも好きですが) 。

さて、このファミリーに属するフレグランスは端正で気品のある格式高い香りが特徴です。
共通するのはふかふかと柔らかい質感と深い渋みが特徴のオークモス (苔) がベースに取り入れられていること。モスやウッディ、ベチバーを基調に、トップに軽いシトラス・フルーティー系の香りを組み込み、明暗コントラストを際立たせた調合はよく見かけます。

近年はシプレ香水に欠かせないオークモス香料の使用量が規制で制限されていることから、ひとむかし前にはよくあった深みのある端正なシプレ香水はなかなか見かけなくなりました。
「シプレ」と銘打ってあるものでも「…これがシプレ?」と首をかしげたくなってしまう軽くてスカスカの商品もしばしば。モダンフレグランスの中に、お気に入りのシプレフレグランスを見つけられたらいいなと思っています。

シプレ調
【特徴】
あたたかくどっしりしたモスの効いた端正で気品あふれる香り
【分類】
フルーティーシプレ:ベースのモスを基調に果実の甘さを合わせた優しくもドライな香り
例) 「ミツコ」(ゲラン) 
フローラルシプレ:ベースのモスを基調に花々を重ねた深く上品な香り
例) 「ミス・ディオール (1947年)」(クリスチャン・ディオール)※ / 「ノウイング」(エスティ―ローダー) / 「トロワ」(ジバンシイ) 
※現在販売されている「ミス・ディオール」は調香が大幅に変わっており、シプレ要素は抜け落ちている
グリーンシプレ:ガルバナムやヒヤシンスの青みを立たせた爽やかかつどっしりと重みのある香り
例) 「ボルドニュイ (夜間飛行) 」(ゲラン) / 「きものかぜ」(ミヤシンマパルファン) 
レザーシプレ:レザーの渋みを合わせた端正かつ力強い香り
例) 「カボシャール」(グレ) / 「ミヤコ」(オーフォリー) / 「バンディ」(ロベール・ピゲ)
今年生誕100年を迎えたシプレの名香、ミツコ
3. フゼア調


フゼア (fougere) はフランス語で「シダのような」を意味する単語です。
元祖はウビガン社の「フジェール・ロワイヤル」(1882年)。実際にシダが使われているわけではなく、オークモスやラベンダー、トンカビーン由来の合成香料クマリンを基調に、シダの香りをイメージして創られた香水でした。
この香水にてはじめて合成香料が用いられ、以後香水の表現力が格段に向上したそうです。二代目エメ・ゲランが作出した「ジッキー」(1889年) はこの流れを汲んでおり、二作品とも香水界を大きく揺るがしました。

ちなみにこの「フジェール・ロワイヤル」、オリジナルはもちろんとっくの昔に廃盤になっています。2010年に復刻版が発売されましたがオリジナルとは別物。現在オリジナル版は、フランスの名門調香学校・ISIPCAが管理する香水博物館の中に保管されており、特別な許しを得ないと中には入れないそうです。
匂いの帝王ルカ・トゥリンは頼み込んでこのオリジナルの香りを嗅がせてもらったことがあるそうで、そのときの感動を自身のエッセイに綴っています。彼の表現が非常に印象的で心に残っています。

さて、フゼアグループに属する香りは「男性的」「紳士的」と表現されることが多いようです。それは、フゼア調の定番処方であるベルガモット×ラベンダー×オークモス×クマリン (※) を基調とした香りが、男性用の整髪料にもよく用いられることによるものだと思います。確かにカッチリとした上品な身のこなしのおじさまを連想する香り立ちのものが多いです。
最近は女性でも使いやすい軽いタッチのフゼア調フレグランスが増えているように思います。

※クマリン:桜の葉に特徴的に含まれる合成化合物で、桜餅を思わせる粉っぽいバニラ様の甘い香りが特徴

フゼア調
【特徴】
渋みのあるモスにアロマティックなラベンダー、ふんわり甘いクマリンが合わさった紳士的で品格ある香り
【代表作】
▶「ジッキ―」(ゲラン)
▶「エタニティ―・フォー・メン」(カルバンクライン)
▶「アリュールオム」(シャネル)
▶「アザロ・プール・オム」(アザロ)
▶「ディオール・オム」(ディオール)

愛用しているゲランのジッキー
4. オリエンタル調


「オリエンタル」というとわれわれ日本人からすると「東洋」、すなわちアジアを指しているように感じますが、香水界における「オリエンタル」とは中東や東南アジアのイメージを指すことが多いようです。

オリエンタルフレグランスの先駆けと言われているのは、ゲランの「ルールブルー」(1912年)。フローラル香水の項でコティの「ロリガン」に影響を受けて創られたと書きましたが、「ルールブルー」はフローラルブーケにさらにしっとりとパウダリックなオリスとヘリオトロープ、あたたかいバニラとムスクを加え、オリエンタル調の側面を加えました。
その後、同じくゲランの「シャリマー」(1925年) によっていちカテゴリーとして確立し、次々に後続品が生まれたようです。「シャリマー」は、「ジッキー」に合成香料バニリンを大量投下するという実験的試みから生まれたそうなので、ジッキーもオリエンタル調の立役者のひとりと言えそうです。

あたたかいバニラやムスク、シナモンやカルダモンなどのスパイスや樹脂・ウッディ香が基調の甘くあたたかく重みのある香りが特徴。一般的にベースノートに用いられる香料が主役としてふんだんに使われているため、春夏よりも秋冬向けの商品が豊富です。

オリエンタル調
【特徴】
あたたかく甘くなめらかな、ふくらみのあるセンシュアルな香り。
【分類】
フローラルオリエンタル (フロリエンタル) : フローラル調とオリエンタル調の融合。華やかな香り
例) 「トレゾァ」 (ランコム) / 「プワゾン」 (ディオール) / 「ルウルウ」 (キャシャレル) / 「ココ」 (シャネル)
ウッディオリエンタル:どっしりと温かい木や樹脂が主役に香る、風格ある香り
例) デザイア (ダンヒル) / アンブルスュルタン (セルジュルタンス) 
ソフトオリエンタル:パウダリックな質感が加わるふんわりと優しい印象
例) ルールブルー (ゲラン)
セミオリエンタル:スパイスやウッディが主役でありつつ軽くてスッキリした質感。比較的新しく生まれたジャンル
例) ヴァ―ラ (ペンハリガン)

大好きな「ヴァーラ」はスッキリとして軽く
使いやすいオリエンタル香水
各カテゴリーから選出・わたしのお気に入り


好きなものが山ほどあって挙げるのが難しいですが、各カテゴリーの中から特にお気に入りの香水をいくつか紹介したいと思います。

1-1. フローラル調:「JOY」ジャン・パトゥ
こちらは復刻版のパルファン
ヴィンテージのオードパルファン。
ヴィンテージのパルファンはもったいなくて
まだ開封できていません


つい最近、LVMH社に買収され「パトゥ」にブランドリニューアルされることが決まったジャン・パトゥの「ジョイ」。
とても好きで、現行品からヴィンテージまで色々なバージョンを収集しています。

当時「香水界のロールスロイス」と呼ばれるほど、貴重な天然香料をふんだんに用いた「世界一高価な香水」。最高級のグラース産ジャスミンとローズドメにシベットの輝き。はじめて香ったときはあまりの華やかさとその密度の高さにクラクラしたものです。まさに名前の通り、喜びに満ち溢れた香りだと思います。

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ジャンパトゥ
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1-2. フローラル調:「La Chasse Aux Papillons」ラルチザン・パフューム


ちょうちょをつかまえて」の邦題でお馴染み、ラルチザンパフュームの「シャッセオパピオン」も中高生の頃母にプレゼントしてもらって以来愛用し続けている大好きなフローラル香水です。

「ジョイ」と同じく多種多様の花々を集めたフローラルブーケの香調でありながら、その香りは対照的。「シャッセオパピオン」には絢爛たる迫力も豪奢な輝きもなく、ただ素朴で生き生きとした花々が風通しよく香ります。
つける人を選ばない、優しい花束の香りです。

LA CHASSE AUX PAPILLONS / シャッセオパピオン【香水レビュー】

2019-08-06
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ラルチザンパフューム
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2. シプレ調:「KNOWING」エスティーローダー
洗練された美しい造形


ミツコについては以前別記事で詳しくレビューしたので、他のものを挙げます。ノウイングは「フローラルシプレ」の隠れた名香で、国内では廃盤になっていますが本国ではいまだに長く販売され続けています。

二十歳の頃母にプレゼントしてもらった思い入れのある香りです。当時はじめて本格的に恋をして、メイクやファッションの研究にばかり勤しんでいたわたしに「内面の美と知性も大切にしなさい」というさりげないメッセージだったのかもしれません。
その頃はもちろんこのクラシカルで品格ある香りをうまくつけこなすことができませんでしたが、最近になってようやくこの香りのゆたかな気品を楽しめるようになってきたように思います。
ふくよかで渋いモスがしっかりと香りつつ、ソーピーなアルデハイド・ローズや繊細なスズランがコク深い輝きを添え、オリスが印象的なしっとりと落ち着いたエンドを迎えます。歳を重ねても、いつまでも大切に使い続けたい大好きな香りです。

KNOWING / ノウイング【香水レビュー】

2019-08-07

MITSOUKO / ミツコ パルファム【香水レビュー】

2019-09-29
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エスティ―ローダー
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3. フゼア調:「Gris…Clair」セルジュ・ルタンス
名前の通り繊細で美しい液色


淡いグレー」という名前の通り、儚く繊細な香り。
モスが入っていないので完全なフゼア調とは言えないかもしれません。
ラベンダーとトンカビーンがメインで香り、明らかにフゼアの血を継いでいると思うためここに挙げます。一度国内廃盤となり、先日「コレクションポリテスシリーズ」のひとつとして復刻しました。私が持っているのはオリジナル版です。

青みのあるラベンダーが粉雪のようなアイリスとトンカビーンに優しくくるまれ、しんしんと静かに香り立つ印象的な香り。孤独をつつみこんでくれるような優しさがあります。
冬、冷えた空気の中で纏うのが大好きでこれからの季節欠かせません。

Gris clair… / グリクレール (淡いグレー)【香水レビュー】

2019-08-08
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セルジュルタンス
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4. オリエンタル調:「COCO」シャネル
亡くなった祖父が海外出張の度に
祖母に香水をプレゼントしていたそう。
ココもそのひとつ


オリエンタル調の香水には好きなものが非常に多いので何を挙げるか迷いました。ここではシャネルの「ココ」を。
祖母から譲ってもらったヴィンテージのパルファンを、大切にチビチビと使っています。

華やかなジャスミンとローズが印象的なトップを抜け、スパイスがふんだんに効いたあたたかなミドルへ。樹脂とアニマリックなコクが効いたとろけるバニラへ至るまで、どこを切り取ってもため息もの。
祖母に試させてもらったオリジナルの「No.5」や「No.19」パルファンも筆舌に尽くしがたいすばらしさで感動しましたが、やはり自分が纏うには人生の修行が圧倒的に足りないとすぐに悟りました。
「ココ」の場合は甘く温かいオリエンタル調の香りなだけあって懐が深く、今のわたしをも受け入れてくれるように感じています。

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シャネル
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終わりに


上でも触れましたが、分類にとらわれすぎる必要はないと思います。
昨今は分類し難い複雑な香りが増えていますし、そもそもすべての香りにオリジナリティがありますから、あえて枠に押し込むのは無粋かもしれません。

ただ、メジャーな香りの系統を理解しておくと自身の好みを客観的に把握するのに役立ちますし、他人のレビューやブランドサイトの説明を読んで、文面からおおまかにどんな香りか予想できるようになるので便利です。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。