パルファンサトリのトライアルセットBを購入しました【香水レビュー】


先日、パルファンサトリのトライアルセットBを購入しました。
日本人調香師、大沢さとりさんが立ち上げていらっしゃるパルファンサトリ。日本人ならではの繊細な感性で生み出された、「軽くほのかで、風通しの良い香り」が揃っています。ルカ・トゥリン執筆の「世界香水ガイドⅢ」に日本のメゾンとして初めて掲載され、多くの香りが高評価を獲得していたことでも話題となっていましたね。
トライアルセットAの方にはすでに愛用している香りがいくつか含まれていたため今回は購入しませんでしたが、まだまだ試したい香りがあるのでまた後日購入しようと思います。
公式サイトは <こちら> から。

本記事では、トライアルセットBに含まれる10種類の香りをレビューしてみたいと思います。

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パルファンサトリ・トライアルセットBの基本情報


トライアルセットAにはメゾンの中で「女性向け」と定義しているフェミニンで華やかな香りが並ぶのに対し、Bに入っているのはユニセックスで使える香りたち。
甘すぎないサッパリした香りや、深みのある静かな香りが豊富にラインナップされています。

トライアルセットBに含まれる香り
・Petit Trianon (プチトリアノン)
・Satori (さとり)
・Iris Homme (イリスオム)
・Mizunara (ミズナラ)
・Black Peony (ブラックピオニー)
・Mother Road 66 (マザーロード66)
・Musk Blue (ムスクブルー)
・Oribe (織部) (2019/11/21追記:香り・値段は据え置きのまま、”Hyouge”という名前にリニューアルされたそうです) 
・Koke Shimizu (苔清水)
・Kon Shiro (紺白)


10種類の香りサンプルの他、香水に関する基礎知識が纏まった小冊子「PERFUME BOOK」がついて税抜き¥3,000。サンプルに含まれる液量が0.5mlと少ないことを考慮しても、良心的な価格設定だと思います。ボトルを購入するか否かの判断は、0.5ml あれば十分に可能です。
購入の度に大沢さとりさんが手書きでメッセージを添えて下さるのが細やかなお心遣いで素敵です。大切に飾っています。

一点、液漏れしにくいのは素晴らしいのですが蓋が非常に固くて開け閉めしづらいことのみ残念でした。2本ほど、明らかに固い (チューブの半径が小さいのか蓋の半径が大きいのか…) サンプルがあり、蓋を外せた頃には指にタコができていたほど。
とはいえトータルで鑑みて、非常にお得でありがたいセットであることには変わりありません。

トライアルセットBに含まれる香りの紹介とレビュー
1. Petit Trianon -プリトリアノンー


ヴェルサイユ宮殿の離宮、「プチトリアノン」は、王妃マリー・アントワネットが生涯でもっとも幸福なひとときを過ごした場所といわれているそうです。
当時のフランス宮廷御用達調香師、ジャン・ルイ・ファージョンが素顔の王女に捧げた香りをイメージした、凛と優しいグリーン・フローラル調の香りです。


<トップ> シトラス・ヒヤシンス・ネロリ
<ミドル> ローズ・ジャスミン・クローブ・カーネーション
<ベース> ムスク・アンバー・サンダルウッド


きらきらとした陽の光を思わせるネロリが印象的なトップノート。サッパリと甘いオレンジがジューシーな果実味を添え、ほんのりと青みのある爽やかなヒヤシンスがそよ風のように優しく吹き抜けます。まさに、晴れた日の牧歌的な田園風景が目に浮かぶ香り。

華やかでロマンティックな桃色のバラがおだやかに花開き、ミドルノートへと展開していきます。ほんの少量加えられたジャスミンアブソリュートが奥でそっと香り、草葉の呼吸でかすかに濡れた空気感を表現しているようです。
クローブとカーネーションに共通する芳香成分オイゲノールが含まれていますが主張は控えめ。ほんのりと甘辛い影を落とします。

やがてふんわりとしたムスクが香りを包み込み、どこまでも優しくあたたかく肌に溶け込んでいきます。
「グリーンフローラル」の香りというと生臭い青みが主張するのでは…と敬遠しがちな方もいらっしゃるのではと思いますが、この香りに関してはそのような心配は要りません。とても使いやすい、サッパリとして気品に満ちたフローラル。

2. Satori -さとりー


10本の中で特に楽しみにしていた1本。パルファンサトリの代表作です。
黄金よりも価値のあるといわれる最高級の沈香木、「伽羅」は、辛・苦・甘・酸・鹹 ( しおからい) の五味を持つといいます。
辛みをシナモンとクローブ、甘みをバニラ、苦みをカカオ、そして酸味としおからさをベルガモットとオークモスで表現し、伽羅の香りに象徴される和の世界観を体現した香り、それが「さとり」です。

アガーウッド / ウード (沈香) の香りとは?

2019-09-21


<トップ> ベルガモット・コリアンダー
<ミドル> シナモン・クローブ・カカオ・バニラ
<ベース> オリバナム・サンダルウッド・アガーウッド


ベルガモットの深く豊かな酸味と渋み、コリアンダーの鼻をスーッと抜けていく涼しい芳香、そしてその爽やかな風を塗りつぶすように深く香るシナモンとクローズの甘辛さ、なめらかなバニラ。
時間が経つとミルキーなサンダルウッドがほんのりと煙たく香ばしいアガーウッドとオリバナム (乳香) を従えてあたたかく香り、心が落ち着きます。

上の処方のみ見るとオリエンタル調にありがちな香りが脳裏に浮かぶのに、「さとり」にはそれらとは圧倒的に異なる確かな「和の空気」と静寂が横たわっているのが不思議。静けさに身と心を沈めたいとき、助けてくれる香りです。

3. Iris Homme -イリスオムー


数ある香料の中でも各段に高価なのがイリス。アヤメ属の草本類の根から取れる香料です。3年以上生育した根茎を収穫し、洗浄後天日干しをして、さらに2~3年以上貯蔵することで特有のコク深いバイオレット様の香気成分が抽出できます。
収穫直後のイリスは青臭く、芋らしい匂いで決して香水には使用できません。
香料を採油できるようになるまでに最低5~6年かかること、さらに採油率が非常に低くわずかな精油しか採取できないことが、イリスが高価である理由です。

そんな上質なイリスをシンプルに愉しめる知的な香りが「イリスオム」だそう。


<トップ> レモン・カルダモン・オレンジフラワー
<ミドル> イリスバター・バイオレットリーフ・ジャスミンアブソリュート
<ベース> アンバー・サンダルウッド・ライトムスク

サッパリとしたレモンと塩気のあるカルダモンが爽やかなトップノート。
名前から重くてパウダリックな香りを想像していましたが、立ち上がりはどこまでも軽やかでフレッシュ。続いてオレンジフラワーとジャスミン特有のきらきらした光と深い闇が同居する華やかな香りが重なり、厚みが増します。
バイオレットリーフのほんのりと青くメタリックなキレを中和するように、しっとりとパウダリックなイリスが優しく香るミドル。トップの余韻が香りが粉っぽく沈むのを防ぎ、アイボリー色の光のように透け感を保っているのが印象的でした。
中盤までは、名前に冠するほどイリスが主張するようには思えなかったのですが、3~4時間経過するとドライなイリスが優しく匂い立ちとてもいい香りです。多めに肌にのせておいて、残り香を愉しみたいですね。

4. Mizunara -ミズナラー


こちらも楽しみにしていた香り。昨年末発売された新作ですね。
湖畔に広がるミズナラの林をイメージしたみずみずしい香りが徐々に樽香を思わせるあたたかく豊潤な香りへと移り変わっていきます。

下に載せた処方から想像する香りより、各段に軽やかで透明感のある香り立ちに驚きました。日本人に使いやすい「軽くほのかで風通しのよい香り」にこだわっているというパルファンサトリですから、何か特別な工夫がなされているのかもしれません。ウッディ調のフレグランスに抵抗のある方でも使いやすいはずです。


<トップ> ガルバナム・クラリセージ・ラベンダー・ローズマリー・コニャックオイル
<ミドル> ジュニパー・サイプレス・パチュリ
<ベース> カモミールブルー・シスト・ラブダナム・トル―バルサム・サンダルウッド


ムエットに鼻を寄せると、まず仄甘い水の香りがします。メロンに似た、甘く果汁したたる瓜様の香り。何の香りかしらと考えているうちにその香りはふと息を潜め、代わりにガルバナムのもふもふとした柔らかいグリーンが一陣の風となって通り過ぎていきます。直後、再び帰ってくる甘くみずみずしい香り。
後述する「ブラックピオニー」のトップにも同じ香りを感じるので、これがコニャックオイルの正体なのだろうと思います。不思議と心癒される独特な存在感。

やがてジュニパーとサイプレスの涼やかなウッディが顔を出し、静謐な森の空気を演出。そして、次第に樹脂の香ばしく甘い香りがあたたかく豊潤に香りながらラストを迎えます。ミドルからラストが非常にいい香りなのは言うまでもないのですが、トップノートの言葉にできないどこか懐かしい香りが特に印象的でした。解明したくてつい何度も嗅いでしまいます。

5. Black Peony -ブラックピオニーー


黒い牡丹の花を重厚感のあるオリエンタル調の処方で表現した、パルファンサトリの中でもっともクラシカルな香り。
第一印象は「この香り知ってる!」でした。どこかで似た香りを絶対に嗅いだことがあるはずなのですが、思い出せません。嗅いでいるとどこか懐かしい気持ちになります。
クラシカルな香りは重く濃厚で、日常的なシーンにうまく馴染んでくれないこともしばしば。その点パルファンサトリのフレグランスはどれも軽やかで優しい香り立ちを保っており、使いやすいのが嬉しいです。


<トップ> ベルガモット・マンダリン・プチグレン・ネロリ・コニャックオイル
<ミドル> オレンジフラワー・バイオレット・ゼラニウム・パチュリ・クローブ
<ベース> 白檀・シナモン・ウッディ・アンバー・モス・バニラ・シベット・オリバナム・カストリウム


「ミズナラ」の項でも述べた、仄甘くみずみずしいコニャックオイルの香りがシトラスと溶け合い、水滴のようにきらめくトップノート。
プチグレンとは、柑橘類の葉や小枝、ときに花を水蒸気蒸留して得られる精油の総称で、香りを拡散させて軽やかさを増す効果に優れます。

クローブの甘辛いスパイスノートがパウダリックなバイオレットと絡む特徴的なミドルノート。ツンとしたオレンジフラワーのおかげで香りが籠りすぎず、絶妙な濁り具合。
バニラやシナモンのあたたかい甘さが絡む至福のラストノートまで、サラリとした質感がずっと続くのが不思議であり、また心地よいです。
軽めのオリエンタルノートを愉しみたいときに重宝してくれそうですね。

6. Mother Road 66 -マザーロード66ー


かつてのアメリカのメインストリートとしてシカゴとロサンゼルスを繋いだ4000kmの道路、「ルート66」。別名「マザーロード」とも呼ばれる道をテーマに創られたこの香りは、爽快感溢れるハーバルシトラス調の香りです。
酸味がきつすぎることのない柔らかいシトラスで、柑橘系の香りが苦手な方でも無理なく使えそう。


<トップ> レモン・ガルバナム・マンダリン・ブラックペッパー・ベルガモット
<ミドル> ラベンダー・ローズマリー・ローズウッド・クローブ
<ベース> ライトムスク・モス・アンバー・ウッディパウダリー


爽やかなレモンとマンダリンが炭酸のように弾けるトップノート。ペッパーがほんのりと香り、シャープな奥行きを添えています。

ローズマリーのアロマティックな香りが爽快感溢れる風のごとく駆け抜けていくミドル。メンズライクになりすぎず仄かな甘さが保たれているので、女性でも使いやすいのが嬉しいです。シュワっと軽いムスキーノートで旅も終演。
終始軽くて爽やかで、まったく嫌味がないところが好きです。手元にあると重宝しそう。

7. Musk Blue -ムスクブルー


Jazzを聴きながらゆったりと流れるメランコリックな青い時間ー。
ため息のように気怠いムスクアンバーの香りで男性にオススメとのことですが、女性でも使いやすいと思います。


<トップ> カルダモン・レモン・マンダリン・ベルガモット
<ミドル> イリス・バイオレット・ミモザ・ラベンダー・クローブ
<ベース> パイン・バルサム・ムスク・アンバー


塩気のあるカルダモンとサッパリとして渋いベルガモットからはじまり、ハーバルなラベンダーが爽やかさを添えるオープニング。
確かにトップノートはややメンズライクな処方になっており、女性の間では好みがわかれるかもしれません。ただ、ひとつひとつの香料が非常に優しく繊細に香り強すぎないので、基本的にはどなたでも違和感なく使いやすいはず。

やがてほんのりと青くパウダリックなバイオレットとミモザがあたたかみのあるベースのムスクへと溶けていきます。松の木の清涼感のあるシャープなウッディ香が、重たく籠りすぎないようにすずやかな風を吹き込んでいるのが印象的。
甘さ控えめなフローラルムスク。いい香りです。

8. Oribe -織部ー


茶名をお持ちの大沢さとりさんが描く日本茶の世界。
大胆で自由な気風で新しい価値観をもたらした16世紀の茶人、古田織部をモチーフに、抹茶の苦みやふわりと軽い質感を表現した香りです。
これまで嗅いだことのない新鮮なグリーンノートの香りに驚きました。


<トップ> グリーンリーフ・セージ
<ミドル> ジャスミン・バイオレット・パチュリ
<ベース> ウッディノート・イリス


トップ、深いグリーンと同時に香るフルーティー様の甘酸っぱさを感じるのですが、この香りの正体がわかりません。青い葉を噛み潰すと青々しさの奥にえぐみのある酸味を感じますが、あの酸味よりもはるかに感じのよい洗練された甘酸っぱさ。この酸味が、おそらくグリーンノートの野性味を抑えているのだろうと思いつつ、ない方がお茶らしさは増したのではないかとも感じます。

ムエット上では次第にパウダリックなフローラルがおだやかに顔を出しますが、わたしの肌の上ではトップノートの独壇場。ミドルはほとんど感じられないままラストノートへと突入します。イリスのしっとりとしたパウダリーな質感が、ふんわりと泡立てられたお抹茶らしさの表現に一役買っているようです。
全編通してとても個性的な香りで、さすが茶道を嗜んでいらっしゃる日本人ならではの調香だと感じました。

9. Koke Shimizu -苔清水ー


岩の上をほとばしる澄んだ水の流れ、みずみずしい若芽のやわらかさ、春の冷たい空気。明度・彩度の高いシトラスグリーンから、モッシーな深みのあるムスク香へと着地する、落ち着きのある美しい香りです。


<トップ> レモン・ベルガモット・ハーブ
<ミドル> ミュゲ・ジャスミン
<ベース> ムスク・ウッディ・モス・パチュリ

静かな清流を思わせるベルガモットとハーブからはじまります。青葉の生気溢れるグリーンがしっかりと香り、草木の力強さを感じさせてくれます。レモンがえぐみを抑えてくれているお陰で纏いやすいのが嬉しい。

ミュゲの清潔感に富んだ優しいフローラルが間をつなぎ、深いモスやパチュリへとうつろうラストノート。岩場にはりつくもふもふと柔らかい苔や流木が脳裏に浮かぶ、清らかな香り。嗅いでいるともののけ姫のワンシーンが思い出されます。

10. Kon Shiro -紺白ー


柔らかいコットンシャツにそでを通したときの高揚感、優しいリネンに包まれて眠るやすらぎ。
シンプルで上質な「白と紺」の色合わせをモチーフに、フルーティーとアルデハイドを組み合わせた新鮮な香り。
「リネン」をイメージして創られた香りはよくありますが、これまであまりピンとくるものに出会えませんでした。
こちらは上で触れたトップの豊潤なフルーティー香が新鮮で、おもしろかった。とても好きです。


<トップ> ベルガモット・レモンピール・ガルバナム・カシス・アルデハイド
<ミドル> シクラメン・ローズ・ジャスミン・オレンジフラワー・クローブ・ドライプルーン
<ベース> パチュリ・べチバー・サンダルウッド・カカオ


豊潤なカシスとほんのりビターなレモン。アルデハイド (C-12) は香料を四方に光を放つように輝かせながら空気にのせて放つ効果に優れていて、そんなアルデハイドの風にのってどこまでも豊かなフルーツ香が香り立ちます。

やがてローズを主体とした柔らかいフローラルへと移行し、香ばしいウッディベースのあたたかみを帯びた香りへと着地していきます。いわゆる「リネン系」の香水によく用いられるムスクが使われていないところが個性的でとても素敵だと思いました。知的で洗練されていて、同時に柔らかい優しさも香る魅力的なフレグランスです。

総括・お気に入りベスト3


トライアルセットBに含まれる香り10種類を、簡単ではありますがレビューしてみました。
どの香りにも、特有のいい意味での水っぽさがあり、それが日本の風土や気候とマッチしてやわらかく軽やかに香る要因となっているように感じます。
どれも素敵な香りでしたが、個人的に特にお気に入りとなった香りを三つ、下記に紹介します。

1.  SATORI -さとりー


パルファンサトリの代表作なだけあって、心に響く美しい香りだと思いました。
心に落ち着きと安らぎをもたらしてくれる、静かで内省的な香りであるところがとても好きです。
よくある「お寺のお香」をモチーフにしたオリエンタル調の香りは、われわれ日本人からすると過剰にスモーキーで息が詰まるような感覚を覚え苦手だ、と仰る方をよく見かけます。
そんな方でも、この香りであれば和の安寧に身を委ね、深くリラックスすることができるのではないでしょうか。

2. Kon Shiro -紺白ー


透き通った光を放つすがすがしいアルデハイドと豊潤なフルーティーノートの組み合わせが独特の陰影を生んでおり、心を掴まれました。
どんなシーンでも活躍してくれるだろう、明るく優しく、そして凛と輝く香水。
凍える冬の空気の中で、夜空を切り裂く流れ星のごとく鮮やかに香ります。

3. Petit Trianon -プチトリアノンー


情景が目に浮かぶ、素朴で優しいグリーンフローラルがとても好きです。
グッチの「エンヴィ」がお好きな方はこの香りももれなくお好みではないでしょうか。グリーンの匙加減が絶妙で、青みのある香りが苦手な方でも使いやすいところが嬉しい。今の季節もいいですが、春に全身にふんわりと纏いたいですね。